top

早大の地下に潜む「学館の主」って何者?【ユースなう!Vol.83】

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE

早稲田大学の多くのサークルが、活動の拠点としている学生会館。「学館」とよばれ、日々いろいろな学生でごった返すこの館内には、いつ来ても見かける「主」がいるという。

誰がいつ来ても見かけるという「学館の主」。その人は、一体何者なんだろうか…? 恐る恐るインタビューしてみることにしました。

photo1

《学生の声》
週4くらいで練習に来てますが、いつ来ても、坊主のボールの人がいるんですよね

最初、フリースタイルバスケのサークルの人かと思ってたんですが、あの人はサークルには所属してないみたいで

大会でも優勝してるすごい人らしいです” etc……

これらは、学館に来ていた学生から聞いた、「主」のうわさ。教えてくれた学生も、練習熱心そうだったけど、それを超えるというからよほどすごい人なのだろう…。

そう思って探していたら、うわさ通り、ボールを蹴り上げている坊主の男性が地下2階に…! もしかして、あなたが「学館の主」!

photo2
photo3

早稲田の学館の主

フリースタイルフットボーラー・沼田隆治

photo4

沼田隆治さん(21歳)
社会科学部3年
元・早稲田大学パフォーマンス研究会
Twitter:@ballpeople1006

聞いていたうわさでは「強者」感がすごかったけど、会ってみると気さくな青年パフォーマー。でも、サッカーボールを使っているのに、Tシャツには「WASEDA BALLERS」と、早稲田の有名なフリースタイルバスケットボールサークルのロゴ…。謎は多し。早速、気になることを聞いてみました。

—初めまして。突然すみません。「WASEDA BALLERS」と書かれたTシャツを着てらっしゃいますが、サークルの方なんですか?

「これはWASEDA BALLERSの友達からもらったもので…」。

—ということはWASEDA BALLERSの方ではないってことですね。

「はい。学館にいるとよく間違われますが、僕はバスケの方ではなく、『フリースタイルフットボール』をやってます」。

—「フリースタイルフットボール」ですか。初めて聞きました。

「サッカーから派生したもので、サッカーボールを音楽に合わせてリフティングしたりドリブルしたりするパフォーマンスです。でも、メジャーじゃないので、あんまり知られてないですね」。

—サッカーボールを使っていたので、スポーツかと思ってましたが、チアやダンスと同じくパフォーマンスなんですね。サークルでやられてるってことなのでしょうか?

「いえ。僕は大学入ってからずっと個人でやっていて。基本、YouTubeで動画見たりして独学でやってます。でも、パフォーマンスをいろんな人に見てもらいたいなと思って、仲間4人と「早稲田大学パフォーマンス研究会」というサークルを今年度の春に作りました。早稲田祭に出るために作ったので、11月に解散しちゃったんですけど」。

—え、解散しちゃったんですか。もったいない…。でも、大学入ってからずっとサークルではなく個人ベースなんですよね。いつも学館には、どのくらいの頻度で来てるんですか?

「起きてから寝るまで、毎日ですね(笑)」。

—それは通りで、誰が来てもお見かけするわけですね(笑)。

「ですね(笑)。なので、練習場所をいつも占領してしまっていて申し訳ないです…」。

—この学館に来る人たちと話したりしますか?

「いつも練習してるスペースが近い、ダンスサークルの方たちとは話したりします。でも、練習スペースの奪い合い…というか、で、もめたりもしまして…。本当すみません…」。

—確かにここ(学館の地下)って、みんな空きスペースで自由にやってる感じですもんね。

「だからこそいろんなサークルが来るんですけど、ダンスサークルの方が多いですね。あとはよさこいとか社交ダンスとか。さすがに毎日練習してると、この学館の地下2階にいる人たちは、だいたい顔も知っていて。名前が分かる人もいますよ」。

—まさに学館の主ですね。

「主として密かに、みんなのパフォーマンス動画もチェックしてたりしますので(笑)」。

—それはすごい…!! ところで、ほとんどの時間を学館での練習に費やされてますが、授業やバイトはどうしてるんですか?

「授業は週1で行くくらいですかね。でも1、2年の時の貯金があるので、単位は大丈夫だと思います。バイトはしてないです。その時間を練習に使いたいので…」。

photo5

↑ 沼田さんの時間割。ほとんどが「たまに」や「出ない」になってます。

—ストイック…。バイトしないとなると、お金はどうしてるんですか?

「親から1日の昼食代として1000円はもらってるので、それで生活してますね。日々練習しかしないので、使うと言ってもご飯とレッドブルくらいなので足りてます(笑)。フリースタイルフットボールは、ボールとスピーカーと練習着があれば、新しい出費もないので」。

—たしかに、練習メインだったらお金はかからなさそうですね。でも、そんなに練習して、普段見せる場ってないんでしょうか?

「普段は、パフォーマンスを募集してるところに売り込みをしたり、パフォーマンスしたくなったらストリートでやったりですかね。サークルではないですが、仲間と一緒に気ままにやってます」。

—ストリートって、渋谷とかでやってる路上パフォーマンスのことですか?

「そうですね。クリスマスはサンタの格好してやりました!」。

「でも規制されてしまうこともあるので、ライセンスに挑戦中で」。

—ライセンスなんてあるんですか?

「東京都の場合、『ヘブンアーティスト』って資格があって。それを取ると決められた場所なら条件付きでパフォーマンスしていいってものがあるんですよ。でも、年に1回しか審査がなくて」。

—そんな資格があったんですか。路上パフォーマンスも一苦労なんですね。フリースタイルフットボールの大会とかは出ないんでしょうか? 大会で優勝してるともうわさにお聞きしましたが。

「え? それはないですよ!(笑) 今まで大会やバトルイベントには出たことがなくて。最近は名前を知ってもらうためにも、バトルに出てみようかなとは思ってるんですが」。

—あれれ…そうなんですか! 個人練でこんなに技を磨かれてるのに、どうして今まで出なかったんですか?

「んーなんでしょう。バトルって、第三者に上とか下とか決められるじゃないですか。フリースタイルフットボールは、スポーツとは違ってパフォーマンスなので、上下より、やってて楽しいのが大事かなって。だから、自分的には練習が1番好きで。今日も閉館の10時までいるつもりですよ」。

—本当に練習が好きなんですね。授業よりも練習をとってたりすると、親御さんからは、心配されませんか?

「そうですね。やっぱり練習ばっかしてることはよく思ってないですね。「いつまでも続けてるんじゃねーよ」って言われたこともあります。でも、親の言うことも間違ってないし、この昼食代も、「大学入る時にすべての時間を責任を持って自己管理するので」って頼み込んで、もらってるものだったりするので。自分も不安だし、パフォーマンスは続けつつ、就活はちゃんとやらなきゃなと思ってます」。

—プロにはならないんですか?

「いや、あくまでフリースタイルフットボールの活動を続けることがベースにはあります。なので、続けられるような会社がいいですよね。でも、今就活で調べてて気になってるのは、木下大サーカスとシルクドソレイユ(笑)。シルクドソレイユに関しては、どうやらフリースタイルフットボールの枠があるみたいで、動画で応募できるみたいです」。

—そのキャリアすごいですね。学館の主からシルクドソレイユ。ぜひなってほしい! 会社員になったとしても、あくまでフリースタイルフットボールが軸の人生なんですね。

「そうですね。フリースタイルフットボールは、体が動かなくなるまで続けようと決めているので」。

photo6

毎日練習するのは、「人生かけて一流になろう」っ初めて思えたものだから

—なぜそこまで、フリースタイルフットボールに執着があるんですか?

「人生かけて一流になろうって、初めて思えたものだからですかね。小学生の時はアメフト、中学と高校の途中まではラグビーをやってたんですけど、全部いいところまでいって負ける、みたいな中途半端なことが多かったんで」。

—アメフトとラグビーやってたんですか?

「はい。小学校の時に『アイシールド21』というアメフト漫画を読んで感化されて始めて、その流れで中学でラグビーをやってみたんですけど。最初は楽しかったんですが、体格で県選抜を落とされちゃったりして。痛いしやめよう、というタイミングで、フリースタイルフットボールに出会ったんですよね」。

—それはすごい転機ですね。今までがっつりスポーツだったわけですもんね。

「ですね。元々サッカーを観るのが好きで、やってみたかったんですけど。その時もう高2だったし、今更初めてもやってきてる人には勝てないな、と思って諦めていて。そしたら、フリースタイルフットボールの世界大会「Red Bull Street Style World Final」の動画に行き着いたんですよね。これならリフティングだけだし、いけるんじゃないかな!って思えて。それで、その時から独学で練習してました。すぐ受験シーズンに入ってできなかったんですけど」。

—大学に入る前に、そんなストーリーがあったんですね。改めて、これだけ熱中するフリースタイルフットボール。それにしかない魅力を教えてください!

「今までスポーツはやってきましたが、フリースタイルフットボールの場合は、スポーツでもあり芸術なんですよね。だから、スポーツみたいに上手くなる楽しさはありつつ、上下がはっきりしてるスポーツは違って、それぞれがある。どっちが上手いか下手かだけじゃないんですよね。だから、練習する分人を楽しませられるし、そこが醍醐味です」。

練習ばっかりして何やってんの? そう、凡人は言いたくなるけど。「人生かけて一流になる」。そう思えるものに打ち込む毎日は、他の人にはわからない価値があるんだろうと思う。学館の主、ばんざい!