思考の花園へようこそ~女子大生が哲学やってみた~【ユースなう! Vol.113】

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「哲学」と聞いて、どんなことを思い浮かべますか? 「とりあえずアリストテレス」「高校生の時、睡眠時間だった倫理の授業」「昔の人がすごく難しいことを考えること」。そんな風に、「なんかよくわかんないけどとりあえず面白くなさそう」というイメージはないでしょうか? しかし! 哲学を楽しむ若者がいます! 今回は哲学サークル【東女哲学サロン・スピラル】のみなさんにインタビューをさせてもらい、哲学にまつわるあれやこれやを聞いてきました!
教科書に出てくる哲学者は、ほぼほぼ男性。そんな中女性だけで哲学を行うサークルは珍しいのではないかと思い、取材オファーをしました! そこで今回は「哲学女子会」と題し、女子が特に気になるメイクやファッションの話題を通して哲学初心者のライター松田が、哲学の面白さを教えてもらっています!
※この記事ではライターが哲学初心者のため、スピラルの皆さんの考えに幾度となく脱帽しています。それゆえ「へぇ」「ほお」「なるほど」「たしかに」という感嘆詞が多すぎるほど登場します。少々目に付くかもしれませんが、あたたかい目で読んでいただけますと幸いです。

スピラルのメンバー栗田さん(大学4年生)、鈴木さん(大学院1年生)、中山さん(大学院1年生)、古谷さん(大学4年生)、赤坂さん(1年生)の5名の方にオンラインでお話していただきました!

 

女子だけの哲学サークル。普段は何をしているの!?

 

––––本日はご参加いただきありがとうございます! よろしくお願いいたします!

みなさん:お願いしまーす!

––––みなさん普段は哲学書の読書会であったり、哲学対話をされているとHPで拝見したのですが、具体的にどのようなことをされているのですか?

栗田さん(以下栗):哲学対話は、今はオンラインで身近な疑問を出していって、一番興味あるものをその場で話し合って思考を深めていくという活動をしています。読書会は「こんな哲学書が読みたい」とか疑問に沿った参考書を見つけてきたりして、あらかじめ少し読んでから内容について話し合っています。

––––なるほど。身近な疑問というのは具体的にどういうものがあがりますか?

:最近どんな対話しましたっけ(笑)。

中山さん(以下中):前にしたのは「友達について」ですか? あと前に「オンラインと対面で会う違いはなにか」ってやりませんでしたっけ?

:やりましたね(笑)。結構タイムリーな話題をやることが多いですね。

––––そうなんですね! 結構難しいテーマというよりは、本当に身近なことを話し合われているんですね。

:はい! 結構思いつきで問いを出していって、1番面白そうなものを選ぶという形で、「哲学」という名前がついていても、そんなに難しいことを話しているわけではないです!

––––なるほど~(ライター興味津々)。


↑哲学対話中のホワイトボード

––––他大学の方と活動もされているようですが、どのようなことをされていますか?

:他大学の方とも哲学対話をしています。実は私も最初哲学って難しいめがね掛けた人の集まりかなって思っていました(笑)。でも実際は色んな学生さんがいて。見た目からは想像できないけど黙々と作業している人も多くて、見た目と中身って全然違うんだなって身をもって分かりましたね。理屈では分かっていたけれど、対話することで実際に分かるという経験があります。これが活動の面白さだと思います!


↑活動の様子

 

哲学女子会、さっそくスタート!

 

––––ではここから哲学女子会の本題に入らせていただこうと思います!まず初めに、女子会の定番であろう「かっこいい人」の話題から。「この人哲学的にかっこいい!」と思った哲学者っています?

:これは大学院で専攻している鈴木さんから!(笑)

鈴木さん(以下鈴):私が考え方がかっこいいと思う人は、今修士論文でも書いているフランスの20世紀の哲学者【メルロ・ポンティ】っていう人で、

––––ほーーー(ライター:だ、だれーーーー!?)


↑メルロポンティ1908-1961

:彼以前の哲学だと「心」と「身体」っていうものを分けて考えていて、どちらかというと「心」のほうが大事だということが長く語られていたんですね。でも私の推しメンていうか(笑)。好きなメルロ・ポンティは「心」というよりも、もう少し「身体」に目を向けたらどうかっていうことを訴えていて、

––––(ライター:…最初からすごいのきたなぁこれからついていけるかなぁ)

:たしかに二項対立している中でも「どっちが有利」とか「どっちが劣っている」ということを考えずに心と身体が分かれた時に、こう(手を使って説明)、生じる間の部分を考えていこうよという考え方をする人なんですね。その部分にすごく惹かれて。世の中には「これが正しい」「これが間違っている」っていう対立する部分が結構あると思うんですけど、彼の考え方だと「まずは両方に目を向けてみよう」と。「両方の中にやっぱり通じているもの、繋がっているものがあるんじゃないか」って考える方なんですよね。

––––へぇーーー(身体と心の間の部分とは???? 難しい~!)

:二つに別れた時に生じる見えない部分を考えていこうとする彼の考え方がすごくいいなと思って、今その人について研究しています。

––––すごい…(未知の領域に入った気持ち)

 

「『女性』とは?」とは?

 

––––私がみなさんのサークルを知った時に驚いたのが女性だけの哲学サークルということだったんです。というのも、教科書に出てくる哲学者は全員男性で、哲学は男性が中心でするものというイメージがありました。他大の男性が中心の哲学サークルの方と対話するときに、何か違いを感じることはありますか?

:そうですね。一度「子育て」について話した時に女性視点と男性視点で違いがあると感じたことがありました。女性は実際に育てる時のことを話すのですが、男性は将来どうなってほしいかという成長した後のことについて話すっていうのが印象的でしたね。

––––それはけっこうおもしろい違いですね。

:異性の中に入ると「そうだ、自分は女子だったんだ」って思います(笑) 無意識に考えが違っているっていうことに対話を通して初めて気づくんですよね。

古谷さん(以下:古):あんまり年齢とかも気にしないですよね。「1女、2女」っていう言葉も共学の子から初めて聞きました。
※1女=1年生女子 2女=2年生女子 の略語

––––えーーー!そうなんですね! 共学にいたら普通に使います(ライターは共学に通う)。

:「1年生の女の子」とか、「2年生の女の子」って分けて考えたことがなかったです。若さみたいなものをそんなに意識して接していないんです。

––––そうなんですね! ……すごく漠然とした質問なんですけど、「女性」ってなんだと思いますか?

:なんか【ボーヴォワール】みたい!

––––なんですかそれは!?


↑ボーヴォワール 1908-1986

:「女性は女に生まれるんじゃなくて、女になっていく」と言った方です。

––––なるほど~。とても共感するところがあります。1番最初に出てきたと思われる女性哲学者は、いつ頃の人なんでしょうか?

:そうですね~。いわゆる近代現代。「つい最近」って言われるようなぐらいじゃないとなかなか出てこない。
私たちが受ける哲学の授業も男性の先生が主で。大学で女性の妊娠や結婚の倫理について教えてもらう授業も男性の先生なんですね。これが学んでいる方は違和感があって。やっぱり男性が教えるのと女性が教えるのとでは受け取り方も違ってちょっとモヤモヤしたことがあったんですね。「女性だから」「男性だから」というカテゴリーで分けてはいけないと思いますが、でもどこかでそのカテゴリーにひっかかってしまう自分がいるな、とジェンダーや哲学の授業を受けていて感じますね。

––––そうなんですね。現代でもあまり女性の哲学者はいないようですが、みなさんはなぜ女性の哲学者が少ないと思いますか?

:そもそもかつて、学問をやるのが男性だけだったということだと思います。ピーターラビットを描いた【ビアトリクス・ポター】はキノコについて論文書いていたんですけど、


↑ビアトリクス・ポター 1866-1943

––––キノコについて論文書いてたんですか!?(笑)

:そうなんです。でも「女性だから」ということで全然自然科学の分野で受け入れられなくて。だから絵本作家になったっていう話があったりします。そもそもアカデミアの世界が男性主義だったっていうのがあるなって思います。

:哲学という意味の「フィロソフィー」っていう言葉があるじゃないですか。これって女性名詞なんですよね。私自身「なんで女性名詞なんだろう」って考えていて、色々な先生に尋ねてみたら「哲学は男性がやるものだから」っていう返事をもらって(苦笑)。男性がやるからこそ女性名詞ということみたいで未だにモヤモヤする部分があります。

:船とかも昔男性が使うものだからよく女性の名前つけられますよね。例えば「ビクトリア号」とか。

:フランス語の先生も同じことを言っていました。車とか船とか男性が使うから女性名詞だよって。

––––たーーしかに!!!

:たぶん哲学的なことは女性もっと考えていたんだと思います。随筆とかエッセイとか。哲学書としてではないけど、そういう形で残したてきたのかと。

 

「見た目」について哲学的に考えてみた!

 

––––ここで冒頭で鈴木さんの推しの哲学者のお話で少しでてきた「見た目」について聞きたくて。見た目のことについて語っている哲学者は他にもいるのでしょうか?

:「見た目」というテーマより「身体」っていうものでアプローチしている哲学者が多くて。彼らの考えからスタートすることで、見た目、ファッション、美容とか色々なものに繋げていける感じがしています。

––––哲学的な考え方で何か「見た目」についての考え方が変わったということはありますか?

:哲学の本という訳ではないのですが、「だから私はメイクする」という本の編集者の方と話したことで考えが変わったという経験があります。

––––それはどのような本なのでしょうか?

:色々な女性のメイクエピソードが載っていて、自分が「メイクをする理由」がそれぞれあるという本です。メイクは自分を表現するためのものだし、メイクによって自分の気分が上がるというのは、すごいアイテムだなと思って。もちろんそういう意味では全然男性に拓かれていくことも当然だと思います。僕はそれまでは全然メイクをしなかったのですが、たまにメイクをするようになりました。「自分のために」っていう意味で。

––––たしかに。それはメイクの「考え方」として、素人でも哲学的だと感じます。

:「自分の思考」という意味で、面白いと思います。

––––今の本みたいに、みなさんそれぞれメイクについて哲学もっていたりします?自分はなんのためにメイクしているのかみたいな。

:メイクって結構「詐欺メイク」とかあって、全然別の自分を演出できるっていうすごく良いツールじゃないですか。でも私は今の顔もそんなに大好きって訳じゃないけど、別の顔に変えたいとは思わないので、今もっているものを活かすメイクっていうのにこだわっていて。例えば、自分の目以上に誇張しすぎるんじゃなくて、このすっとした一重を受け入れて、この一重を活かすラインをちゃんと引けば、それで十分きれいなんだって思うようにしてます。

赤坂さん(以下赤):私は栗田さんと反対で、けっこうメイクを「対人武装」みたいに思っているところがあって。

:あー!なるほど!

:自分の顔がコンプレックスなので、さっき言ったみたいな「詐欺メイク」とか自分じゃない顔になるのがほんとに好きで。自分じゃない顔になることで、高揚感…じゃないけど、結構気分が上がるので、それはそれで1つの形かなという風には思います。

:「武装」はめっちゃ分かります(笑)。見た目を変えると強気になれるし、楽しくなる。メイクは「メイクした」っていう事実だけでその日1日のモチベーションが上がるんですよね。
あとメイクではないですが見た目の変化が「武装だな」って思ったことがあって。髪のインナーカラーを金にしていたことがあるんですけど、その時は痴漢されなかったんですよ。「男性ってこの少しの違いだけでそんなに態度変える!?ビビりすぎじゃない!?」 って思いました(笑)。

:たしかに。髪の毛の色もありますね。私前に金ぴかみたいな色にしていたんですけど、染め直した今、やっぱり金ぴかだった頃の方が大胆になれたような気はします。着る服の柄とかめっちゃ派手になったりとか。

––––たしかに、見た目って気持ちに関係していますよね。行動とか。みなさんの中で「見た目を変えて行動が変わった」ということはありますか?

:私、高校時代メガネからコンタクトに変えた時期があって。最初、メガネがないと他人に顔を見られることにちょっと緊張していた時期があったんですけど、なんか緊張しているからこそ自分の表情がどう見られているかすごく意識するようになって。そうすると表情だけじゃなくて、話し方とか振る舞いも変えてみようと思って、より社交的になったなっていうのが見た目と中身の変化です。

––––あーーー、なるほど~。それはすごく面白いですね。

 

哲学って面白い!

 

最後に哲学の面白さについてお聞きしました! みなさん名言頻発です!

▼栗田さん▼

▼鈴木さん▼

▼古谷さん▼

▼中山さん▼

▼赤坂さん▼

ライターは何回「なるほど」と言ったのでしょうか。彼女たちの考えを聞く度に、今まで当たり前として意識を向けていなかった大事なことを発見できた気がしました!
哲学は1人で考え込む難しいものではなくて、人と対話することから始まる楽しいものだということも、今回の哲学会に参加してみて分かったことです。
誰かと対話して、自分自身の考えを育てる。実は哲学が不安定な現代で活躍する若者の最強ツールなのかもしれません!みなさんもまずは誰かと対話することから始めてみてはいかがでしょうか~!?

【取材協力】
東女哲学サロン・スピラル
Twitter:https://twitter.com/tetsugaku_twcu

松田ひなた(まつたひなた)
かぼちゃと焼き鳥とアイドルに目がない。基本的にgo my way。
書いた記事:#Matsuta/instagram:@chewhina1717