つながりを大切にするゴールボール日本代表・山口凌河の、2020年の野望とは?【アンビシャスユースVol.2】
2018.03.12
「野望」って、口に出すのは恥ずかしい。けど、口に出すから叶う事もある。2年後に東京オリンピックという特別なイベントを迎えた今、いっちょやってやりたいこと、言ってみようじゃないか!! ということで、野望を秘めた「アンビシャスユース」たちに、そのアンビションを教えてもらいました。
第2弾目の「アンビシャスユース」は、ゴールボール日本代表の大学生・山口凌河さん。
ゴールボールとは、目隠しを着用した1チーム3人のプレーヤーによる、パラリンピック(以下、パラ)の正式種目です。コート内で鈴入りのボールを転がし投げ、味方のゴールを守りながら相手のゴールに入れて得点を競います。
これがなかなかの迫力。 ぜひ動画もご覧ください!
—さてさて。2020年はそう遠くない今、同世代のユースはどんな野望をは抱いているんだろう?ということで、野望を聞いていこう!という企画です!
野望…。ゴールボールの選手として、と個人としての野望があります
—なるほど。 ではぜひ今日はその野望を、お聞かせください!
はい!
<アンビション1>
選手として、パラリンピックの舞台でメダルをとる!

—動画を見たのですが、ゴールボールは迫力があって面白いですね!
よかったです(笑)。ゴールボールでは防御と攻撃のポジションがあるので、見ていてスリルが楽しめる競技だと思います。
—そうですね! しかし、目隠しをした真っ暗な状態でどのようにプレイしているんですか?
まずは仲間の声です。それと、ボールに鈴が入っているんですけど、その音の角度ですね。
—音の角度?!
はい。ボールの出てくる方向とか、感覚でつかむんです。それで、ボールがどのあたりを転がっているか、とかバウンドしているとかで扱いを変えていきます。コートの大きさも、ヒモで囲ったのを触って確認してから、あとは感覚で把握してコントロールします。
なので、やってみてわかる面白さがあります。
―そのゴールボールの選手としての野望があるんですね。
そうです! まずは、レギュラーとして24分の競技時間を戦うこと。そして、6人のチームとしてパラという世界を舞台とした大きな場でメダルをとることです。そこで貢献できるよう、自分にできることをしたいです!
<アンビション2>
個人として、ゴールボールをみんなに知ってもらい、見てもらいたい

—私はこの取材をするまでゴールボールを知らなかったのですが、元から知っている人というのは多くないですよね。
そうですね、ゴールボールってマイナーなんですよ(笑)。
盲学校でのクラブ活動で恩師に勧められるまで、自分もそれを知りませんでした。ゴールボールというのはパラスポーツの中でも、車椅子バスケなどみんなが知っている競技を基にできたものではないので、人に伝える難しさがありますね。
—なるほど。それではなぜ、ゴールボールを広めようとしているのですか?
自分たちがゴールボールにかける思いを知って欲しいからです。自分自身、ゴールボールで今いる場所の構造や周りの音を理解する技術を身につけて、日常でも活かせるようになったし、人間的にも成長できたと思います。みんなに新しいものを積極的にアピールすることで、それまで知らなかったことから気付けることがあると信じています。
―そうなんですね。そのために何か意識していることはありますか?
まずは2020に向かって継続的に、自分がゴールボールを伝えていきたいです。また、パラというとオリンピックに比べてまだマイナーな感じがありますが、パラ競技の体験会や講演をして、みんなに理解を進めてもらいたいです。まずは、地元や大学近辺からかな。ゴールボールもスポーツの一つとして誰もができるものだと知ってもらうのが第一歩だと思います!
—なるほど。ところで、山口さんは選手でありながら大学生ですが、普段はどんな生活をしているんですか?
大学では、ソフトを使って、音声を再生して授業をみんなと一緒に受けてて、ゼミもとってます。競技の週2の練習と、たまに海外遠征とかもあるけど、それ以外は地元の友達と飲んだり遊んでたりすることもあります。マジメだけではつまらないので、楽しく!
講演会等の活動も含めて、色々なことをして世界を広げて行こうと思っています。
↓講演会などの活動をされている山口さんの紹介の動画はこちら
<アンビション3>
自分にできること “つながりを大切にしていきたい”
—たしかに、色々なことをされてますね! そんなにもこなす山口さんの原動力となっているものは何ですか?
なんでもやってみたいっていう好奇心! 根拠のない自信かもしれないけど「やってみたらできるよ」って思うようにしています。それと、やると周りに言ったからこその自分へのプレッシャーも。そして、自分の中で一番大きいのは、友達や家族の支えです。
—友達や家族の力はどのような時に感じていますか?
ゴールボールの仲間とは切磋琢磨し、パラ(パラリンピック)の舞台を目指しています。競技人口が少ないので、年代も幅広く、仲良くやってます!
友達は、自分が視力を失ってもそれまでと同じように接してくれて。根のいい人たちで、本当に感謝してます(笑)。俺も頑張るからおまえも、という相乗効果にも支えられてますね。
家族はいつも自分のしたいことを応援してくれて、目が見えなくなった現実を直視して、前向きにさせてくれました。
—やはり、他者の存在が大切なんですね。
はい。目が見えないっていうのも、ただの違いであって、個性だと思います。だから「障害者のために~してあげる」ではなく、お互いの支え合いがあたりまえとなるような世界にしたい。そのためには自分から発信することが必要だと思っています。
野望は、2020で終わりじゃない。継続することが大切で、そのための他者との連携「つながり」を大切にしていこうと思います。
—他者とつながっているからこそ今の山口さんがあるんですね。それでは最後に、ひとことお願いします。
違う言葉を話していても、目が見えなくても、スポーツがみんなをつなぐものになると思います。みんなが同じ考えを持てるわけではないけれど、少しでも気づいてくれる人がいてくれたらいい。一人では何もできないので、家族や友達、つながりを持てるすべての人々と、一つでもできることをやっていきたいです。
取材中は、友達や家族の話を楽しそうにする姿が特に印象的だった山口さん。半年で視力のほとんどを失うという大きな壁にぶつかっても、前を向いて堂々と活躍する姿がとてもかっこいい!
知ること、つながること。その一歩で野望に近づくことができるんだなと思いました。

ゴールボール日本代表・山口凌河(21歳)(写真中央)
東洋大学3年。
中3から高校入学までの半年で急激に視力を失い、視覚障害者競技のゴールボールを始める。現在では選手としてだけでなく、大学生活を送りながら数々の講演や、競技の体験会も行う。
インタビュアー・渡邊ひなの(20歳)(写真左)、平山友駿(20歳)(写真右)
企業と行政と学生とを繋ぎ、未来に『Legacy』を残す団体『Legacy for youth』のメンバー。二人とも今回が初のインタビュアーの活動でした! 2020をオリンピック・パラリンピックを盛り上げるための活動をしています。
◎Legacy for youth公式Twitter:@Legacy_ForYouth