人から人へ唄を繋ぐ/成瀬茉倫さんのやぼ~【へ~せ~のやぼ~Vol.8】
2020.11.13
30年続いた平成もついに終止符を打たれました。
平成元年に生まれた人も既に30代に突入し、これからは本格的に平成生まれの人がどんどん活躍する時代へと突入します!
平成が終わったからこそ平成にフォーカスし、〝スキ″に溢れた超若者級の平成世代に新しい時代への〝やぼ~″を宣言してもらいます!
第8弾に登場していただくのは、小学3年生の頃に奄美大島でシマ唄に出会い、現在も唄者として活躍中の成瀬茉倫さんです!
シマ唄は人生の教科書。
平和のメッセージを届けたい。
––––早速ですが、茉倫さんの今のやぼ~はなんですか?
シマ唄を通して平和のメッセージを世界に発信できればなと思っています。
––––平和のメッセージ!
はい、シマ唄は本当に古くから奄美大島の人々の日常の中で唄われ継がれてきた民謡で、だからこそ苦しい気持ちや恋をしている気持ち、抑圧のなかでの憎しみなど人々の生活の中の感情に寄り添う歌詞が多いんです。唄っていると、人生の教科書を読んでいるかのようで。そのような歌詞を平和のメッセージとしても発信できたらなと思います。そして、そのことが奄美大島の活性化にもつながればなと思っています。
––––素敵です!そもそもシマ唄を始めたきっかけってありますか?
お母さんがたまたま三線を集落で習っていたんですけど、お母さんがいけない日に月謝がもったいないということで代わりに行って、面白いと思ったのが始まりです。小学3年生の時です。
––––それまでもやっぱりちょっとやってみたいなという気持ちがあったんですか?
それまでは、小さいころに奄美大島に引っ越してきてから日常の中でシマ唄はよく聞いていたんですけどそんなに興味はなくて。周りの子たちと同じで、当たり前だと思っていたんです。
––––へぇ~きっかけって本当にふとしたところに落ちているものなんですね!
はい、きっかけって大したことじゃなくてもいいんだなと思いました。
––––でもそれをずっと続けているわけですもんね、!
魅力あふれるシマ唄のパワーがたくさんの出会いのきっかけに
––––シマ唄の魅力って何だと思いますか?
シマ唄のシマって「島」の意味だと思う人が多いと思いますが、実は奄美では「集落」を表すんです。だから、集落ごとに唄い方が違っていて、その多様性が面白いです。あと、シマ唄は唄い継がれてきたものなので楽譜や文字に起こされていなくて、誰がいつどういう意図でつくったかわからないことが多いんです。それなのにこの世代までちゃんと継承されていることも魅力的だなと思います。
––––誰が作ったのかわからないっていうのはなんだかロマンを感じます!
はい、歌詞に出てくる場所に行ってみたり、気持ちを想像しながら唄ったりするのも楽しいです。シマ唄の旋律って独特で、心に刺さる切なさがあって。そこにもすごく魅力を感じます。
––––本当に好きな気持ちが伝わってきます。唄を頑張る力の源ってありますか?「好き」の気持ちが大きいのでしょうか?
もちろんシマ唄自体にとても惹かれるっていうこともモチベーションになりますが、続けてこられたのはやっぱりシマ唄がすてきな出会いを引き寄せてくれて、いろいろな人とつなげてくれたことが一番大きいなと思います。島で演奏をしていたころに出会った人や、シマ唄を頑張ることでつながれた人々がたくさんいます。
––––何か特に印象的な演奏が?
東京奄美会というのがあるんですけれども、そこで唄わせていただいたことがあって。今でこそ、飛行機で簡単に奄美と東京を行ったり来たりできますが、昔は島を出るのもすごい決心が必要だったと思います。そういう時代を生きていた奄美出身の方たちが私の唄を聞いて、顔を近づけてぶわーって泣いてくださったときはとてもうれしかったですし、そういう意味でも本当に音楽の人の心を「つなげる」力ってすごいと感じました。もっと勉強しなきゃというモチベーションになります。
––––いろいろな時代の人々を唄が結び合わせてくれるような、なんだかすてきです。
逆にやめたいと思ったことってないですか?
島では近所のレストランで観光客向けに毎週土曜日に唄わせていただいていたんですけども、やっぱり中学2年とかそれぐらいのときは思春期で唄いたくないときがありましたね。 ずっと家のベッドでくるまっていたいみたいな笑 でもそのときに、母に言われたことを今でもすごく覚えていて。「求めてくれている人がいる限りちゃんと行きなさい。」っていう言葉がなんだかすごくしっくり来て。そこからさぼることはなくなりました。
––––お母さんってやっぱり偉大ですね(笑)!
はい(笑)! あとは、大会で悔しい思いをすることはたくさんありました。スポーツとかだと、数字で点数が入って勝ち負けがわかることが多いですが、音楽などは人の感性で判断されるので、はっきり見てわかるものじゃないところが難しくて。シマ唄は集落ごとに唄い方が違うので、判定があまり良くなかったときに納得がいかなかったり、悩んだりすることもありました。
––––あ~確かに!そんな中茉倫さんが唄うときに心がけていることってありますか?
やっぱりそれぞれの歌の伝統的な唄い方に従って忠実に唄うように心がけていますが、その中でどう私らしさを出すかも常に考えています。人によってもシマ唄の唄い方って違うんですけれども、私の唄い方を一切変えずに声の出し方を工夫する練習をボイストレーナーさんとしています。例えば、私は高音がきれいに出るのが特徴なので、そこをいかにうまく引き出せるかを研究しています。
シマ唄とは、「結」の心
––––茉倫さんにとってシマ唄とは?
人と人とのつながりの精神を島では「結」とかいて「ユイ」の心と言うんですけれども、私にとってシマ唄は一言であらわすと「結」です。
––––なるほど! (分かってません)
シマ唄を唄っていると今を生きている友達や家族や唄を聴いてくださる方々との横のつながりの広がりもすごく感じるんですけれども、縦のつながりも感じて。奄美のご先祖様が唄い継いできた、その時の想いや教訓を私が今受け取って、また私が唄うことで次の世代へとつなげていくことに縦の「結」をすごく感じます。
––––ええすてきです! 文字や楽譜にあまり残されていないからこそ、その「結」の力を強く感じますね。
そうですね、やっぱり楽譜がないので、だんだんそういうことも少なくなってきてしまっていますが、奄美の小さい子の多くはおじいちゃんやおばあちゃんが唄っているのを目で見て耳で聞いて真似しながら覚えるんです。それがまさに「縦の結」で、その「人から人へ」という心は今でも変わっていないと思います。
今だからできることを、同じ心で
––––では、改めて茉倫さんのやぼ~を聞いてもいいですか?
昔は奄美にはシマ唄しか娯楽がなかったわけですが、今はネットやテレビなど色々娯楽があるので、シマ唄を継承していく人も少なくなっていってしまっています。これから私たちの世代では、今の環境を活かして、身近な人に継承するだけではなく世界にも「人から人へ」唄を届けられればなと思います。それも一つの「縦の結」なんじゃないかなと。
「結」は今の時代の人たちにも、すごく大事な精神だと思うんです。例えば「インスタでつながってはいるけど、そんなにしゃべらない」とかあるじゃないですか。
––––ありますあります!アカウント交換したけど誰だか全然覚えてないとか。(汗)
そうですよね(笑) だからこそ、シマ唄を唄い続けて、それを聴いてくれた人が「本当のつながりってなんだろう」って考えてもらえるようなきっかけになれれば最高だなと思います。
シマ唄のロマンあふれる世界観と奄美大島の人々の考え方がとてもステキで、気づけばすてきばっかり言っていました。「人と人とのつながりを大事に」当たり前のことのようで忘れがちなこころを現代ならではの新たなかたちで世界に届ける。世界平和もそう遠くないような気持ちになりました。
成瀬茉倫
2001年生まれ。小学3年生頃からシマ唄を始める。第39回奄美民謡大賞奨励賞受賞。2016年鹿児島県青少年海外ふれあい事業にて県の代表15人に選出され、派遣先の香港にてシマ唄を披露。第3回高校生国際シンポジウムでは奄美の過疎化をテーマとした研究で最優秀グランプリを受賞、日本一となりGlobal Link Singapore 2018に出場。現在大学で地域活性化について学びながら唄者として活動中。
Twitter: https://twitter.com/oh_its_marin
Instagram: https://www.instagram.com/marinflies/
【告知】
茉倫さん初のミュージックビデオをyoutubeにて公開中! シマ唄の世界観たっぷりの動画、要チェックです!
